【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~ひとつの出逢い(1)~

開戦から3日目。
ヴァルターやレーダーの属する第19自動車化軍団は、いまやダンツィヒ回廊を突っ切り、東プロイセンの第3軍と合流しようとしていた。
連日連夜の快進撃に、皆疲れ果てていた。

オルブリッヒ:「眠ぃなぁ・・・」

トラウペル:「眠いっすねぇ、オルブリッヒ伍長・・・」

オルブリッヒがいかにも眠そうな声でぼやくと、トラウペルがそれに相槌を打つ。

オルブリッヒ:「これが演習だったら今頃、仮眠してる時間だもんなぁ・・・」

オルブリッヒが更にぼやくと、レーダーがすかさず突っ込む。

レーダー:「お前らうるせぇぞ!さっさと穴を掘れ!」

オルブリッヒ:「レーダーよ、お前はタフでいいなぁ!」

レーダー:「バカ野郎・・・俺だって・・・眠ぃや・・・」

ブッセ:「さてと・・・自分、あと30分で、歩哨の交代っす。」

信管手のブッセもまた、眠そうな声で、会話に交わると、レーダーがそれに応える。

レーダー:「おぅ、歩哨中に居眠りするなよ!」

そんな兵士達の喜劇の様な会話を尻目に、、砲班長のマウラーが、砲床工事の作業を急かす。

マウラー:「さぁ早くしろよ!早く火砲を設置しないと、射撃命令が流れてきちまうぞ!」

まず、空軍の急降下爆撃機(シュトゥーカ)が、敵正面の重要なポイントをピンポイントで爆撃し、次に敵の手薄になった部分を、戦車部隊と装甲擲弾兵部隊からなる機甲部隊が、錐をねじ込むように突破して行く。
その後、機甲部隊によって空けられた小さな穴を、後続の歩兵部隊がこじ開けて広げていく・・・
これが、初期のドイツ軍の採った戦法『電撃戦』である。
この作戦で大事なのは『スピード』。
それは、最前線を援護射撃する砲兵とて変わりは無く、とにかく前進が速すぎて、レーダー達砲兵はこの3日間撃っては撤収、撤収しては移動、そして移動しては設置してまた射撃の繰り返しだった。

一体、こんな事がいつまで続くんだろう・・・
初日こそ皆、沈黙はしていたものの、開戦から3日経った今では、どうにか落ち着きを取り戻してきた。
マウラーはそんな部下達の、こののどかな雰囲気がとても気に入っていた。
だが、この部下たちの中からもいつかは戦死者が出て、その雰囲気もいつかは途絶えてしまうのだろう・・・それは、マウラーの悲しい覚悟だった。
できれば皆、無事にそれぞれの家庭に帰してやりたい・・・。
これが、平時の演習だったら・・・。

レーダー:「マウラー軍曹、火砲の設置、完了しました。」

マウラー:「よし!電話線は繋いだか?」

レーダーから火砲設置の報告を受けると、次にマウラーはオルブリッヒに、野戦電話設置の確認をする。

オルブリッヒ:「はい、繋ぎました。」

マウラー:「よし、配置に付け。」

夜も終わり、もう明け方近くなった。
あまりの眠たさに、つい頭が朦朧としてくる。
漆黒の夜から、少しずつ明るくなり始めていた。

レーダー:「おいトラウペル、お前、今寝ただろ?」

照準手の位置にいるレーダーが、突然おどけたような口調で、向かいの射撃手の位置に居るトラウペルに声をかけた。

トラウペル:「寝てませんよ。」

レーダー:「いいや、寝た。」

トラウペル:「あっ、馬の声!」

その時唐突に、トラウペルがおかしな事を言った。

レーダー:馬の声?トラウペル、お前あまりの眠たさに、ついに幻聴を聞くようにでもなったか?」

ところが・・・それは決して、トラウペルの幻聴などではなかった!
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【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~『ファル・ヴァイス(白の件)』作戦発動!(5)~

後方の野戦病院では、次々と負傷者が運び込まれていた。
栗色の髪にグレーの瞳をしたベルンハルデ・アルニムは21歳。
まだドイツ赤十字の看護学校を卒業したばかりの、新米の看護婦である。
・・・と言うよりは、この秋卒業予定だったのが、戦争が始まる事により1ヶ月繰り上げて卒業させられたのである。
したがって、人間の血を見るのも、傷を見るのも、まだまだ慣れてはいない。
負傷者の手当てをする度、その傷を見て目を背けるのであった。

主任看護婦:「あなた、怪我人を診るのは初めて?」

上司の主任看護婦が、イライラしながら尋ねる。

ベルンハルデ:「はい、実習で少し診ただけです・・・」

主任看護婦:「しっかりなさい!ここに来た以上、あなたも看護婦の一人なのよ!」

ベルンハルデ:「は、はい!」

表で野戦救急車の止まる音がした。
すると、主任看護婦は表へと出て行った・・・

軍医:「おい、君、ちょっとこっちへ来てくれ!」

軍医の一人が、ベルンハルデに呼びかけた。

軍医:「そっちを押さえといてくれ。これでは麻酔も打てん。」

喚き散らし暴れる負傷兵相手に片腕を押さえるのは、女の腕では至難の業である。
ベルンハルデは全体重をかけて、負傷兵の腕を押さえつけた。
何とか麻酔を打ち、軍医は頭の包帯をパラパラと解き始める。
思わず負傷兵の顔に目をやった時、ベルンハルデと負傷兵との目が合った!
片目が・・・
無い・・・
ベルンハルデは、えぐれた負傷兵の片目を見ると、その場に倒れこんで失神してしまった。

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その後、気がついてみると、ベルンハルデは負傷者用のベッドの上に寝かされていた。
そこへ同僚の親友、シャルロッテが話しかけてきた。

シャルロッテ:「あっ、気がついた?」

ベルンハルデ:「ロッテ・・・私・・・」

シャルロッテ:「大騒ぎだったわよ。手当てするはずの看護婦が倒れちゃうんだもんねぇ・・・」

ベルンハルデ:「・・・。」

シャルロッテ「そう言う私も、かなりヤバかったけどね。表に出ない?」

そう言って2人は、建物の表に出た。
もう外は、すっかり暗くなっている。

シャルロッテ:「腰掛けない?」

そう言ってシャルロッテは庭先にあるベンチを指さすと、2人はベンチに腰掛けた。
星がとても綺麗だ。
その綺麗な星空の下、時々遠くから「ダ~ン・・・」と砲声が聞こえてくる。

シャルロッテ:「今日のところは何とか、落ち着いたわね。」

そう言うと、シャルロッテは煙草に火をつけ、吸い始めた。

ベルンハルデ:「これから、どうなるのかなぁ・・・」

ベルンハルデが、不安げにそう呟いた。
前線の兵も、後方の看護婦も、それぞれが不安感に苛まれる中、戦争の第1日目は暮れていった・・・
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【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~『ファル・ヴァイス(白の件)』作戦発動!(4)~

飛行中隊長:「各機に告ぐ。我々は間もなく、目標地点に到達する。全機、対空砲火に注意せよ。以上!」

中隊長が無線で、目標地点上空に達する事を告げる。

シュタウフェン:「いよいよ来たな・・・」

ブラウアー:「さぁ、行きましょう!」

シュタウフェン達の今回の攻撃目標は、前線よりも少し奥にある、敵空軍機の飛行場である。
この飛行場を機銃掃射し、敵戦闘機及び攻撃機を殲滅するのが、今回のシュタウフェン達の任務である。
敵飛行場が、いよいよ見えてきた。

飛行中隊長:「全機、突撃隊形!」

敵の対空砲火が、激しくなってくる。
砲弾が、黒い綿のようになってシュタウフェン達の周りで炸裂する。
そして中隊は、射撃経路に入った。
低空から12機のBf110Cが飛行場に侵入し、敵の対空砲火、そして駐機している軍用機を機銃掃射する。
対空機銃座のポーランド兵が機銃弾を受け、もんどりうって倒れる。
そして、駐機している敵機にも機銃弾を浴びせると、敵機は勢いよく燃え上がった。

ブラウアー:「離陸しようとする敵機がいます!」

ブラウアーがそう報告すると、シュタウフェンは機を反転させ、再び滑走路へと向かって行った。
そして、いましも滑走路から離陸しようと滑走する、ポーランド空軍のPZL P.37中型爆撃機に機銃弾を浴びせたると、滑走していたP.37はバランスを崩し、粉々に分解されて炎上した。

機長A:「ハーゲン機より中隊長機へ!上空に敵機!」

突如、僚機のハーゲン軍曹機より、無線が入った。
見ると上空から、もはや旧式と化していたポーランド空軍のPZL P.11戦闘機の一群が、こちらに向かって襲いかかってきた。

飛行中隊長:「中隊長機より『黄』小隊、『緑』小隊へ!敵機を迎撃せよ!敵機は旧式機だが、敵機の方が低速で小型な分、旋回能力は向こうが勝る。格闘戦に引きずり込まれぬよう、注意せよ!『赤』小隊はそのまま、地上目標に機銃掃射だ!」

飛行小隊長:「こちら『緑』、了解!」

シュタウフェンの小隊の4機は、最大出力で太陽に向かって、グングンと上昇し始めた。
敵機は単発の旧式機で非力、しかも低速なので、当然、Bf110Cには追い付けない
充分登り切った所で機首を反転し、敵機に機首を向けて突っ込む『一撃離脱戦法』の体制をとった。
こうして10分あまり戦って敵を殲滅した後、飛行中隊は帰路の体制に入った。

飛行小隊長:「こちら小隊長機、点呼を取る。各機、順番に報告しろ。」

小隊長は点呼を取った。

シュタウフェン:「シュタウフェン機、ハーゲン機、共に異状無し!」

どうやらシュタウフェンの分隊は、共に無事のようだ。
その旨を小隊長機に報告すると、シュタウフェンはブラウアーに言った。

シュタウフェン:「さて、ブラウアー、帰るぞ!」

ブラウアー:「了解!」

そしてシュタウフェン達、駆逐機隊は西に向かって帰路に着いた・・・
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【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~『ファル・ヴァイス(白の件)』作戦発動!(3)~

レーダー達砲兵隊の準備射撃が終わる頃、前線では戦車部隊が、進撃の準備に入っていた。
ヒューゴ・ヴァルター伍長は21歳。
金色の髪にブルーの瞳をした、いかにもゲルマン民族といった感じの好青年である。
この時のドイツ戦車隊の主力は、お世辞にも強力とは言えないI号戦車とII号戦車、それに配備され始めたばかりの極少数のIII号戦車とIV号戦車であったが、ヴァルターの部隊に配備されているのは、チェコ併合の際に手に入れた、チェコ製の38(t)戦車であった。
ヴァルターは、この38(t)戦車A型の操縦手を務める。

中隊長:「最終弾落下10秒前!」

轟々とした戦車隊のエンジン音の中、中隊長が声高々と叫ぶ。
9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・
やがて砲兵隊の砲撃が終わると、中隊長が挙げていた右腕を振り下ろした。
それを見た車長のシュペアリンク軍曹が、車内マイクで「前進!」と号令をかける。
ヴァルターがミッションを入れると、戦車は唸るような轟音を立てて、前進を始めた。
白い遮断機を超えると、そこはもうポーランド領内だ!

シュペアリンク:「楔形陣形!」

ヴァルターのヘッドセットに、シュペアリンクからの指令が入る。

ヴァルター:「了解!」

ヴァルターが答えると、戦車隊は速やかに横一列に散開する。
砲兵隊の攻撃準備射撃が効いたのか、戦場は妙に静かだ・・・
戦車隊は、注意深く前進する。
その時、前方に、一つの閃光が見えた!
砲火光だ!
「グワンッ!」と鈍い音を立てて、弾は38(t)軽戦車の側面をかすめた。
それと同時に、敵は数か所の陣地から、機関銃を撃ってきた。
銃弾が装甲板に当たり、カチカチと音を立てて弾ける。

シュペアリンク:「前方の陣地、対戦車砲!、距離600、榴弾!」

シュペアリンクが喚いた。
装填手のカッペル一等兵は、主砲に榴弾を込める。

シュペアリンク:「いいか、カッペル!」

カッペル:「装填よし!」

この頃の戦車はまだ、乗員が3~4名という戦車が多く、この38(t)戦車も車長、操縦手、無線手、装填手の4人乗りで、砲手は車長が兼ねた。
周りを見て状況判断をし、照準眼鏡を覗いて射撃するという、車長はなかなか骨の折れる仕事だった。
主砲から放たれた37mm戦車砲の榴弾が、対戦車砲陣地を直撃する。
小隊の戦車4台から集中砲火を浴びて、対戦車砲陣地は沈黙した。

シュペアリンク:「11時方向、機関銃座、距離500、榴弾!」

砲塔を旋回させると、敵の機関銃座に向けて、再び榴弾を撃つ。
1発目は至近弾。
2発目で、機関銃座を制圧した。
小隊の他の戦車も各々別の機関銃座を攻撃しており、ヴァルターの属する戦車中隊は完全に敵の陣地を制圧した。
占拠は後から来る歩兵部隊に任せ、戦車中隊は、前線を突破して先を急いだ。

pz38t_a.jpg
38(t)戦車A型
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