【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~それぞれの道(1)~

シュペアリンク:「気を付け!」

ここはヴァルターの中隊の中隊長室。
シュペアリンクとヴァルターの2人は、中隊長室に呼ばれていた。

シュペアリンク:「敬礼!」

ヴァルター達は、中隊長に敬礼をした。

シュペアリンク:「直れ!」

戦車中隊長:「休め!」

中隊長がそう号令をかけると、ヴァルター達は『休め』の姿勢をとった。

中隊長:「ハインリヒ・シュペアリンク軍曹、ヒューゴ・ヴァルター伍長の両名に、転属を命ずる。シュペアリンク軍曹は、西の部隊へ転属だな。ポーランドとの戦いが終わった今、今度はフランスとの戦いになると言われている。今後のフランス軍の動向に、十分注意してくれ。以上だ。」

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その夜、シュペアリンクとヴァルターは、ブレストの街のクラブで最後の杯を交わした。

ヴァルター:「軍曹と酒を飲むのも、今日で最後ですね。」

シュペアリンク:「あぁ。お前とは長い付き合いだったが、思えばいろいろあったなぁ・・・」

ヴァルター:「えぇ・・・」

シュペアリンク:「覚えてるか?お前がまだ一等兵だった頃、お前、酔った勢いでユダヤ女を襲ってたSA(突撃隊)隊員に後から蹴り食らわしたのを・・・」

ヴァルター:「えぇ、覚えてますよ。あの時は営内班長だった軍曹にこっ酷く叱られて、外出禁止になったなぁ・・・」

シュペアリンク:「お前ってホント、ワルだったよなぁ・・・」

ヴァルター:「俺は、あの連中は気に食わなかった。それだけの事です。」

シュペアリンク:「なぁヴァルター、ブレスト・リトフスク要塞が陥落してソヴィエト兵と飲みまくってた時、お前、一人で外に出て行っただろ?あの時、ソヴィエト兵の女を口説いて俺たちの戦車を見せてやったって噂、あれは本当か?」

シュペアリンクが小声で、そうヴァルターに尋ねた。

ヴァルター:「さぁ、知りませんね・・・」

シュペアリンク:「本当かぁ?ワルのお前なら、やりそうだな。」

ヴァルター:「知りませんよ。」

シュペアリンク:「どうだか・・・」

ヴァルター:「・・・いやいや、最後の最後に、軍曹に嘘は言えませんね。噂は本当です。」

ヴァルターがようやく自白すると、シュペアリンクは驚いた顔で、「ヒューッ!」と口笛を吹いた。

シュペアリンク:「マジか!なぁなぁ、そのロシア女、どうだった?美人だったか?名前は?」

ヴァルター:「フョードラですよ。フョードラ・シュパーギナ航空兵伍長。黒髪に茶色い瞳で、どこか東洋的な感じのする美人でした。」

シュペアリンク:「そっかぁ、美人かぁ・・・。どう思う?これから先、ドイツはソヴィエトと戦争すると思うか?」

突然、シュペアリンクが真剣な表情になって尋ねた。

ヴァルター:「ソヴィエトとは条約を結んでるんですよ。戦争なんてするわけが無い。」

シュペアリンク:「そうかなぁ?だがな、ヴァルター、総統閣下は共産主義が大っ嫌いなんだ。」

もちろん、ヴァルターもそれは知っていた。
だが、フョードラとは戦いたくないという思いが、ヴァルターにはあった。

ヴァルター:「するわけが無い。それより問題はイギリス、フランスですよ。英仏の連合軍が国境沿いに集結してるって噂もあるし、いつドイツに攻め込んで来てもおかしくない状態だ。」

シュペアリンク:「あぁ、そうだな・・・。でも、フランス軍は俺に任せとけ!」

ヴァルター:「シュペアリンク軍曹・・・死なないでください!どうか御無事で・・・」

シュペアリンク:「あぁ!」

そう言って二人は「カチン」とジョッキを合わせると、ビールを一気に飲み干した。
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[ 2017/04/18 18:00 ] 自作戦記:東部戦線第1部 | TB(-) | CM(4)