【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~南進(2)~

ナレフ川を渡河したヴァルター達は、さらに南へと突き進んだ。
ポーランド空軍は壊滅し、制空権はドイツ空軍にあるとは言え、ポーランド軍の抵抗はまだ続いていた。
道路をひたすら突き進んでいると、右手にある森の中から、突然ポーランド軍の対戦車砲が発砲してきた。
随伴の装甲輸送車が道を外れ、路肩に横転する。

シュペアリンク:「3時方向、対戦車砲!榴弾!」

装填手のルドルファーが、37mm戦車砲に弾を込める。

ダンッ!
38(t)戦車の主砲から弾が放たれた。
対戦車砲は、少なくとも4門はある。
戦車中隊全ての戦車が、敵の対戦車砲を狙っている。
中隊長から、対戦車砲陣地に対しての突撃命令が出た。

シュペアリンク:「ヴァルター、敵の陣地に突っ込むぞ!」

ヴァルター:「了解!」

そう言うとヴァルターは、右側の履帯(キャタピラ)を減速した。
戦車は右に転回し、路肩を駆け降りる。
戦車は、側面よりも前面の装甲の方が厚い。
これで少しは、生存率が高くなる。
既に味方の戦車が、対戦車砲を1門は破壊したらしい。
再び戦車砲を撃つと、他の戦車の弾も含め、約3発が1つの対戦車砲に命中した。
すると残りのポーランド兵達は、ちりぢりになって逃げ出し始めた。
そのポーランド兵に向けて、無線手のヴェヒスラーが車体前面の機関銃を撃ちまくる。
逃げ切れないと悟ったのか、ポーランド兵達は両手を挙げて、森の中から出てきた。
やがて後続の歩兵が到着し、捕虜を歩兵達が検閲し始めると、戦車隊は元の道路へと戻っていった・・・

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ヴァルター:「静か過ぎますね・・・」

ヴァルターはさも訝しげに、シュペアリンクに言った。
敵の攻撃といえば先の対戦車砲陣地ぐらいで、その後は目立った反撃などは殆ど無かった。

シュペアリンク:「そうだな・・・。敵は撤退して、要塞内に立て篭もる気かな?」

実は、シュペアリンクの推察は当たっていた。
この時、前線の全てのポーランド兵は既に撤退しており、ブレスト・リトフスク要塞内での持久戦に備えていた。
イギリス・フランスの連合軍が、ドイツを西側から攻撃してくれる・・・
その淡い希望を、ポーランドは未だ捨てきれないでいたからである。
結局、ヴァルター達の属する第19自動車化軍団は、9月12日までに70km近くも進出し、いよいよブレスト・リトフスク要塞へと差し迫った。
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[ 2009/11/24 18:00 ] 自作戦記:東部戦線第1部 | TB(-) | CM(2)

【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~南進(1)~

9月9日。
ダンツィヒ回廊を突破し、東プロイセンに合流したヴァルター達は、進路一転、今度はワルシャワの東にあるブレスト・リトフスク要塞を目指して南進していた。
ナレフ川へと続く道路では、ドイツ軍の自動車や戦車が大渋滞を起こしていた。

ルドルファー:「暇だなぁ・・・いつになったら橋が架かるんですかねぇ・・・」

ヴァルター:「まったくだ。工兵の連中、真面目に仕事してるんか?」

この大渋滞の中、ヴァルターと、装填手のルドルファー一等兵がぼやく。
二人は渋滞のイライラを、路肩でトランプをして気を紛らわせていた。

ルドルファー:「まったく、こんな事してたら陽が暮れっちまいますよ。とりあえずツーペア。」

ヴァルター:「スリーカードだ。」

ルドルファー:「・・・ったく・・・あーあー、まったくツイてねぇ!」

こうして敵機を気にせずに、道路脇でポーカーなどに興じていられるのも、制空権を完全にドイツ空軍が握っているからである。

ヴァルター:「ルドルファー、お前の彼女、元気か?」

ヴァルターがおもむろに、ルドルファーの彼女の話を持ち出した。

ルドルファー:「はぁ?彼女?そんなもん、とっくの昔に別れちまいましたよ。」

ルドルファーはまるで、女を手玉に取るかの様に気取って、そう答えた。
そこへ、戦車長のシュペアリンク軍曹が、話に割って入る。

シュペアリンク:「ルドルファーの彼女って、どんな女だったんだ?」

ヴァルター:「えぇ、髪はブロンド、目はグリーン・・・」

ヴァルターが茶化すように、ふざけて説明する。

ルドルファー:「ブルーですよ!ヴァルター伍長と同じです!」

ヴァルター:「そうだっけか?とにかく、すっごい美人ですよ!」

シュペアリンク:「へぇ・・・一度、拝んでみたいものだな。」

ヴァルター:「見たい?見たいですか?そーれー!」

そう言ってヴァルターは、隠し持っていた写真の束をばら撒いた。

ルドルファー:「あっ!ヴァルター伍長、いつの間に写真かっぱらったんですか!」

慌てるルドルファーに、シュペアリンクが茶化す様に笑った。

シュペアリンク:「ほぉ、ルドルファーにしてはいい彼女じゃないか。棄てるのは勿体なかったな。」

ルドルファー:「あっ、シュペアリンク軍曹まで、やめてくださいよ!」

シュペアリンク:「別れたって言ってる割には、今でもこうして写真持ってるんだな?」

シュペアリンクが茶化す様に言うと、ルドルファーが拗ねた様に言い放った。

ルドルファー:「放っといてください!」

そう言ってルドルファーは、路肩に散らばった写真を慌てて拾い集めた。
その滑稽な様を見てヴァルター達が笑っていると、戦車に残っていた無線手のヴェヒスラー一等兵が、こちらに向かって叫んできた。

ヴェヒスラー:「シュペアリンク軍曹、橋が開通したそうです!」

シュペアリンク:「そうか!よし、ヴァルター、エンジン始動だ!」

ヴァルター:「了解!」

こうしてヴァルター達戦車隊は、再び前進を始めた。

pz38t_a.jpg
38(t)戦車A型
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[ 2009/11/17 18:00 ] 自作戦記:東部戦線第1部 | TB(-) | CM(2)

【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~ひとつの出逢い(3)~

レーダー:「やめろぉー、来るなぁぁぁー!!!!!!」

レーダーはポーランド兵に捕まっている。
マウラーも、オルブリッヒもトラウペルもである。
夜の闇の向こうに見える野戦用のテントの光の中、敵兵が何やらゴチャゴチャと話し合っているのが聞こえる。
そのテントの中から、3人程敵兵が現れた。
1人は将校、あとの2人は下士官のようである。
そして将校が、マウラーとレーダーの方に向いて言った。

将校:「貴様たちの軍の、編成と配置と作戦目標を教えてもらおう。」

マウラー:「知らん!」

マウラーが突っぱねると、ポーランド将校はマウラーの顔を平手打ちにした。

将校:「貴様はどうだ?」

すると将校は、レーダーとオルブリッヒの方に訊いてきた。

オルブリッヒ:「知らないよ!俺たちは上からの命令で動いてるんだ!そんな細かい事、知るわけ無いだろ!」

オルブリッヒがそう答えると、将校は下士官2人に命じて、トラウペルを近くまで引きずり込んできた。

将校:「言わないと、お前らもこうなるぞ。」

そういうとポーランド将校は、腰に吊るしているサーベルを抜いた。

トラウペル:「いやだ、いやだよぉーーー!!軍曹、助けてくださーーーい!!」

レーダー:「トラウペル!やめろ、やめろぉーーー!!!!!!」

トラウペル:「ぎゃぁーーー!!!!!!」

将校は、レーダー達の目の前でトラウペルの首を刎ねた。
そのトラウペルの首が、レーダーの足元まで転がってきた。
そしてその見開いたトラウペルの目が、レーダーの目と合った。

レーダー:「やめろぉーーー!!!!!!」

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まだ薄暗い明け方の部屋の中、レーダーがベッドから飛び起きた。
時計の振子の音だけが、コツコツと響き渡っている・・・

ベルンハルデ:「あら、目が覚めましたね。」

レーダー:「夢か・・・」

ベルンハルデ「怖い夢を見ていたんですね。こんなに汗がびっしょり…」

レーダー:「ここはどこだ?」

薄暗い部屋、金属管とマットだけでできた堅いベッド・・・
見慣れない光景に、思わずベルンハルデに訊いた。

ベルンハルデ:「ここは病院ですよ。あなたは負傷して、前線から運び込まれてきたんです。」

そう言われて、レーダーは過去の事を思い出そうと試みた。

レーダー:「痛てっ!」

体をずらそうと動かすと、左肩がズキッと痛んだ。

レーダー:「そうか、俺達はあの時、敵の騎兵隊の奇襲を受けて・・・俺は撃たれたんだ。」

ベルンハルデ:「そのようですね・・・」

徐々に、あの時の戦闘の場面が思い出されてきた。

レーダー:「看護婦さん、マウラー軍曹はどうなったんですか!オルブリッヒは!トラウペルは!グリューマーは!」

いささか興奮気味に訊いてきたレーダーだったが、ベルンハルデの反応は意外にも冷静だった。

ベルンハルデ:「前線での様子は、私達にはわかりません。残念ながら・・・」

レーダー:「そうですか・・・」

ベルンハルデ:「そのような名前の負傷兵は、ここには運ばれてきてはいないようですよ。でも病院は他にもあるし、もしご戦死なさっていたら、病院にも・・・」

そう言いかけて、ベルンハルデは「ハッ!」と気まずくなった。

レーダー:「もういい、それ以上は言わんでくれ・・・」

ベルンハルデ:「ごめんなさい・・・生きていますよ、きっと・・・」

ベルンハルデは、まずい事を言ってしまったという気持ちで、話を収めるのに戸惑った。

レーダー:「今日は何日ですか?」

レーダーの方から別の話に振ってくれたので、ベルンハルデは助かったような気がした。

ベルンハルデ:「9月の6日ですわ。」

レーダー:「そうか・・・あれからもう、3日が経ったんだ・・・」

ベルンハルデ:「3日間、ずっと寝ていましたよ。」

レーダー:「そうなんだ・・・看護婦さん、名前、聞いてもいいかな?」

ベルンハルデ:「ディートリッヒ・レーダー伍長の担当を務めさせていただきます、ベルンハルデ・アルニムと申します。宜しくお願いします。」

レーダー:「そうか、ベルンハルデさんかぁ・・・いい名前だぁ。ディートリヒです、宜しくっす!」

ポーランドの片田舎のホテルを徴用した臨時の野戦病院。
夜も明けかけた病室の中で、こうして一つの出会いが生まれた。
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[ 2009/11/10 18:00 ] 自作戦記:東部戦線第1部 | TB(-) | CM(2)

【自作戦記】『東部戦線』第1部『ポーランド電撃戦』~ひとつの出逢い(2)~

レーダー:「こんな所で、馬なんているわけねぇだろ。」

レーダーが呆れた顔で問い質すが、トラウペルはあくまでも馬の声を聴いたと言い張る。

トラウペル:「いえ、確かに聞こえたんですよ。ほら、またブルルルって・・・」

耳をすましてみると、確かに馬の声が聞こえる。

レーダー:「どっかこの辺に、厩舎でもあるのかな?」

その時、いきなりどこかの砲班の兵が叫んだ!

砲兵:「敵襲ーーー!ポーランド騎兵だーーー!」

マウラー:「何をしてる!早く銃を取れ!」

レーダーは一瞬、何が起きたのかわからなかったが、マウラーの怒号でふと我に返る!

レーダー:「なぜこんな所に敵の騎兵が?」

そう思ったが、もはやそんな事など考えている余裕など無かった。
砲兵陣地は、前線とは言ってもかなり後方にある。
敵は、最前線を突破して来たというのか?
いずれにしても、完全な奇襲だった!
レーダー達はあわてて銃を取ると、声のした方に向かって銃を構えた。
各班から次々と銃声が響き始めると、森の中からポーランド騎兵が姿を現した!
1個小隊以上はいる!
勇猛果敢で名高い、あの伝統のポーランド騎兵だ!

トラウペル:「怖いよー!来るな!来るな!」

そう言いながら、トラウペルやフーバー達が小銃を撃った。
しかし、速い馬に乗った動く標的に対しては、なかなか弾も当たらない。
レーダーもオルブリッヒとともに、近づいてきた敵に対してKar98K小銃を撃った。
弾が当たると、敵は馬上からパタリと落ちた。
するとすぐさま、次の敵が現れた。

騎兵:「ハイヤー!!」

そう掛け声をかけて駆け抜けて来ると、ポーランド騎兵はフーバー一等兵を、槍で串刺しにした!

フーバー:「うわぁぁぁ・・・」

トラウペル:「フーバー!」

串刺しになったフーバーを見て、トラウペルが恐怖のあまり、思わず叫んだ。

トラウペル:「畜生め!」

駆け抜けたポーランド兵は馬を下り、着剣した小銃でトラウペルに襲いかかってきた。
その銃剣を薙ぎ払うと、トラウペルはポーランド兵と格闘となった。

トラウペル:「この野郎!」

トラウペルとポーランド兵はその場で転げ回り、お互いの首を絞め合おうとする。
そこへマウラーが、ポーランド兵の後頭部に拳銃の弾を撃ちこんだ。

マウラー:「レーダー、トラウペル、付いて来い!」

マウラーがそう言うと、およそ50m程先にある中隊本部の方を指差した。
マウラー達は短機関銃を撃ちながら、中隊本部を目指した。
するとそこには、車に積まれたMG34機関銃があった。

マウラー:「レーダー、弾を込めろ!トラウペルは援護だ!」

そう言って2人は、そこにあった遺体をどけて車上に登ると、マウラーが機関銃を撃ち始めた。
機関銃の弾を食らい、砲兵陣地を蹂躙するポーランド騎兵達は、パタパタと崩れ落ちる。
その時、レーダーの左肩に、焼き針を打ち込んだような激痛が走った!
飛び跳ねるように、レーダーは車上から転げ落ちた。

トラウペル:「レーダー伍長!!」

マウラー:「レーダー、しっかりしろ!レーダー!」

マウラーとトラウペルの声を聞きながら、レーダーの意識は遠のいていった・・・

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1939年9月3日。
この日、イギリス、フランスがドイツに宣戦布告。
ドイツとポーランドの間の戦争は、遂に世界大戦へと発展した・・・
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[ 2009/11/03 18:00 ] 自作戦記:東部戦線第1部 | TB(-) | CM(2)